食料、水も与えられず真っ暗闇の貨車で移送
そしてもうここで上陸するんだから、全員甲板に出れって言われて。甲板に出たらなんだか変な真っ白い建物がいっぱいあちこちにあるんだけど、ここどこだって。ここが東京だっていうことなんですよね。
はあ、東京って何だかみすぼらしいな、これじゃ根室よりまだ悪いなって思ったのさね。変な東京だなと思いながら、みんなで、おいこれほんとの東京かって言ったって、東京だってみんな言ってるから東京らしい。
とにかく下りてみなきゃわかんないって。そして下りたんですよね。そしたら全部横文字でね。ぜんぜん読めないんですよ。ロシア語だもんね、読めるはずないさね。
ちょっとやあ、これ東京じゃないわこれ、変だぞって。日本じゃないんじゃないかっていうことになって。見たら女の人や子供たちがみんな頭真っ赤、髪の毛は赤いし、着ているもの自体もなんかふわふわしたようなもの、白いスカートみたいなものいっぱい履いて、寒い最中に歩いてるわって。
やっぱりこれ、違うわって。それでロスケの通訳やってる日本の兵隊が、これウラジオストックだっていうことになったわけさ。なんかラジオのような名前の文字だっていうわけさ、文字がね。そしたらやっぱりウラジオだったんだね、あれね。
そこから今度そこで上陸させられて、また貨物みたいのに乗せられて、三十二か三ぐらい車両に分散して、全部乗せられたのよ。僕らのところはね、前から十一、二番目かなあ。そのくらいだったと思うけどね。
ここの隅っこと、こっちの隅っこと二箇所、長めに二十センチぐらいの四方の窓があるんです。鉄格子なんです。ラッパが七本くらいとガラス、あとは何もなし。そこの中へ全部入れさせられたの。そして昼頃になればガタンガタン、ガタガタ動き出す。発車してるんだね。
そして燃料がなくなったんだか、ストップして半日もそこにいるんだわ。ぜんぜん動かないでね。あれシベリア鉄道なんだろうけど、燃料ったって、周辺に枯れ木だとかそういうようなものがあればそれを集めてきてかけながら走ってるんだよね。石炭だとかそういうものはないんだから、その頃は。薪で走らせてる。だから、遅いんだ。僕らは速さはわかんないけどさ。ガッタンガッタン、ガッタンガッタンやってんだよ。
そして何日か、自分が持ってきた食糧はほとんど食べつくしちゃって。今度ぜんぜん食べるものがなくなってきて、毛布の角、チュッチュチュッチュ吸ったんだよ。そんなものさ、ぜんぜん食べるもんなくて。
ちょっと汚い話だけどね、そこの隅っこの一角を便所にしたわけさ。で、便所したくなればそこの隅っこへ行ってするんだわ。便所の山があるでしょ、そしたらやっぱり寒いからね、だんだんそのうちに硬くなるのね。それをガバッと持ってきて、ぶっち切りにするわけ。それを今度食べることになる。食べるんだよ。
皆で分け合って食べるわけだけどね、そりゃやっぱり位の上の者は一番いいの取ってく。若い兵隊だとか、今来たばかりのなったばかりの連中たちはね、本当に隅っこさ。端っこさ。まあそれを繰り返してたらね、何か知らないけれども、そこへ大便しに行く人がいなくなっちゃったの。せっかくやったってみんなに食われるようなもので、自分がさっぱり当たらないでしょう。だからもう行かないんだ。自分で勝手に毛布かぶりながら毛布の中で大便をして、それで自分で食ってんだ、自分のものを自分で食ってんだ。
そうなると、人のためにとかっていうそういう気持ちはまったくなくなるもんだよね。自分さえよければ、自分が生きていればいいんだっていう考え方になるのかね。ひどいもんですね。人間生きることはそういうことなんだなあって僕は思いましたよ。
何日かしてから、外へ出て空気吸わせようとして、昼間停まってね。停まった所がね、ちょうど小さな池みたいな所、沼地だね。沼地の中にちょうど停めてもらったのさ。ドアを開けて降りてもいいってことでね、降りたけどね。満足にちゃんときちんと、あの若い兵隊たちがね、満足にきちんと歩ける人いなかったよ。
足フラフラ、フラフラしちゃってね。もう杖でもなければね、歩けなかった、みんな。もう這うようにしてそこの池まで行ってようやくガブガブ、ガブガブ水飲んだ。そして今度毛布持ってって、毛布しっかり濡らして持って帰ってくるんだわ。いやあ、その味も忘れられないと今思ってるけどね。草や木なんかなんにもないんだもん。シベリアだから。何にもないんだもん。
そしてもうここで上陸するんだから、全員甲板に出れって言われて。甲板に出たらなんだか変な真っ白い建物がいっぱいあちこちにあるんだけど、ここどこだって。ここが東京だっていうことなんですよね。
はあ、東京って何だかみすぼらしいな、これじゃ根室よりまだ悪いなって思ったのさね。変な東京だなと思いながら、みんなで、おいこれほんとの東京かって言ったって、東京だってみんな言ってるから東京らしい。
とにかく下りてみなきゃわかんないって。そして下りたんですよね。そしたら全部横文字でね。ぜんぜん読めないんですよ。ロシア語だもんね、読めるはずないさね。
ちょっとやあ、これ東京じゃないわこれ、変だぞって。日本じゃないんじゃないかっていうことになって。見たら女の人や子供たちがみんな頭真っ赤、髪の毛は赤いし、着ているもの自体もなんかふわふわしたようなもの、白いスカートみたいなものいっぱい履いて、寒い最中に歩いてるわって。
やっぱりこれ、違うわって。それでロスケの通訳やってる日本の兵隊が、これウラジオストックだっていうことになったわけさ。なんかラジオのような名前の文字だっていうわけさ、文字がね。そしたらやっぱりウラジオだったんだね、あれね。
そこから今度そこで上陸させられて、また貨物みたいのに乗せられて、三十二か三ぐらい車両に分散して、全部乗せられたのよ。僕らのところはね、前から十一、二番目かなあ。そのくらいだったと思うけどね。
ここの隅っこと、こっちの隅っこと二箇所、長めに二十センチぐらいの四方の窓があるんです。鉄格子なんです。ラッパが七本くらいとガラス、あとは何もなし。そこの中へ全部入れさせられたの。そして昼頃になればガタンガタン、ガタガタ動き出す。発車してるんだね。
そして燃料がなくなったんだか、ストップして半日もそこにいるんだわ。ぜんぜん動かないでね。あれシベリア鉄道なんだろうけど、燃料ったって、周辺に枯れ木だとかそういうようなものがあればそれを集めてきてかけながら走ってるんだよね。石炭だとかそういうものはないんだから、その頃は。薪で走らせてる。だから、遅いんだ。僕らは速さはわかんないけどさ。ガッタンガッタン、ガッタンガッタンやってんだよ。
そして何日か、自分が持ってきた食糧はほとんど食べつくしちゃって。今度ぜんぜん食べるものがなくなってきて、毛布の角、チュッチュチュッチュ吸ったんだよ。そんなものさ、ぜんぜん食べるもんなくて。
ちょっと汚い話だけどね、そこの隅っこの一角を便所にしたわけさ。で、便所したくなればそこの隅っこへ行ってするんだわ。便所の山があるでしょ、そしたらやっぱり寒いからね、だんだんそのうちに硬くなるのね。それをガバッと持ってきて、ぶっち切りにするわけ。それを今度食べることになる。食べるんだよ。
皆で分け合って食べるわけだけどね、そりゃやっぱり位の上の者は一番いいの取ってく。若い兵隊だとか、今来たばかりのなったばかりの連中たちはね、本当に隅っこさ。端っこさ。まあそれを繰り返してたらね、何か知らないけれども、そこへ大便しに行く人がいなくなっちゃったの。せっかくやったってみんなに食われるようなもので、自分がさっぱり当たらないでしょう。だからもう行かないんだ。自分で勝手に毛布かぶりながら毛布の中で大便をして、それで自分で食ってんだ、自分のものを自分で食ってんだ。
そうなると、人のためにとかっていうそういう気持ちはまったくなくなるもんだよね。自分さえよければ、自分が生きていればいいんだっていう考え方になるのかね。ひどいもんですね。人間生きることはそういうことなんだなあって僕は思いましたよ。
何日かしてから、外へ出て空気吸わせようとして、昼間停まってね。停まった所がね、ちょうど小さな池みたいな所、沼地だね。沼地の中にちょうど停めてもらったのさ。ドアを開けて降りてもいいってことでね、降りたけどね。満足にちゃんときちんと、あの若い兵隊たちがね、満足にきちんと歩ける人いなかったよ。
足フラフラ、フラフラしちゃってね。もう杖でもなければね、歩けなかった、みんな。もう這うようにしてそこの池まで行ってようやくガブガブ、ガブガブ水飲んだ。そして今度毛布持ってって、毛布しっかり濡らして持って帰ってくるんだわ。いやあ、その味も忘れられないと今思ってるけどね。草や木なんかなんにもないんだもん。シベリアだから。何にもないんだもん。