22世紀に生きる君たちへ

「よばあたれ」といじめられた坂本竜馬、 「うつけ者」とバカにされた織田信長、 「姫若子」とよばれるほど内気だった長宗我部元親、 超KY大村益次郎、超どん臭い吉田松陰。 超発達児・偏発達児・臆病児が、英雄児だ。 英雄児育成の盛池塾。塾長・盛池雄峰のブログです。

2009年10月

■22(木)

上越 タミホ

■23(金)

小林氏取材

 渥美清の「喜劇・急行列車」、フランキー堺の「旅行シリーズ」、ザ・ドリフターズの「カモだ! 御用だ!」――昭和を彩る喜劇映画の数々。喜劇映画といえば、瀬川昌治監督。テレビドラマでも「Gメン」、「赤いシリーズ」、「スチュワーデス物語」などの作品を手掛けたことでも知られています。今回は、往年の映画の思い出を振り返りながら、今日の映画、喜劇、そして日本人に対するメッセージをお話しいただきました。

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●思い出の映画、思い出の役者 29

 映画は四八本撮りました。そのうち三分の一が列車を舞台にした喜劇です。もともと東映で渥美清の「列車シリーズ」を撮っていたんですが、評判も良かったことから、「団体列車」、「初詣列車」と続けて渥美さんで撮って、その次の作品として、正月用に新婚列車を撮ろうと準備をしてたのです。ところが、渥美が売れっ子になって、スケジュールの調整がつかず、延期になったんです。
 その後、松竹で旅行シリーズを撮ることになりましたが、そういう事情があって、フランキー堺を起用したのです。台本も彼用に変えたんですが、それがいい結果に繋がりました。「誘惑旅行」はフィリピンを舞台にしました。まだ、海外旅行が一般的ではない時代です。フラさん(フランキー堺)が、日本語を片言しゃべるヘンな外人の役をしましたが、あれがフラさんの芸ですね。
 ドリフターズの松竹映画「全員集合シリーズ」も、最後の二本は私が撮りました。当時はいかりや長介さんが大人気で活躍されてましたね。長さんはコメディアンとしても素晴らしいのですが、役者としても素晴らしい感性を持っていたし、芸の経験の蓄積がある人でした。
 また、役者として周囲を動かす演出力を持ってた人ですね。ドリフのチームワークは、長さんが作り上げたものですから。ドリフの芸は、演技をおろそかにしないで、五人が一体となって長さんを頂点に作り上げた喜劇なんですね。晩年は、コメディアンとしてよりも、ピンの渋い役者として有名になったけど、それができたのも、やはり役者として超一流だったからですね。
 渥美清さんは、ふだんは寡黙でした。体が弱いものですから、撮影の合間にも体を大事にしてました。山田洋二監督は渥美さんを大切にされていたので、渥美さんを、はちゃめちゃにするという事はしませんでしたが、はちゃめちゃも人情喜劇もすっとできる人だったので、「列車シリーズ」に出てもらったんです。
 私がお奨めしたいのは、やはり喜劇ですね。まずは「初詣列車」。アナーキーに爆笑できるような作品で、スラップスティックに渥美さんに演じてもらってます。それから、「男のシリーズ」ですね。「男の泣きどころ」、「男の腕試し」という一連のシリーズは、「快感旅行」の撮影が終えて、金沢からの汽車の中でフランキーさんと話してできたストーリーなんです。ハッスルしすぎて男が立たなくなったが、ストリッパーに癒されてこれが治るという話。脚本は今でも付き合いのある田坂啓さんにお願いしました。

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●失われた、日本人役者の緊張感 21

 最近のお笑いには、いわゆる「芸」というものがないんですね。なかには伊東四朗さんのように、舞台もできる実力のある方もいるのですが。今は劇場もなくなってきているせいかもしれませんが、今のコメディアンは、大衆の目にさらされて苦労して芸を掴むというプロセスがないように思います。
 吉本の芸人さんたちを見ていても、彼らはまだ役者としてしごかれていない。テレビでやたらに入る拍手や笑い声の効果音も、あれがなければ場がもたないということなのでしょう(笑)。
 吉本などには良い先輩がいるんですから、先輩から後輩へと、芸が受け継がれていくといいんですけどね。ただ、今は慌ただしくて、きちんと芸を勉強したり、磨いたりする暇もない。ベルトコンベアーでどんどん出されていくみたいな感じでね。これから大切なのは、本物の役者を育てるかということだと思います。インスタントでない、芸のある役者さんをね。
 最近若手の役者さんの教育指導をしていて思うのは、日本と韓国の若者の違いは表情なんですね。とくに日本の青年達は口元に力がありません。締まりがない。韓国の役者を見ていると、彼らは口元が引き締まっています。韓流スターがもてはやされるのもわかる気がします。
 表情は心を映し出します。心に緊張感を覚えるようなことは、今の日本のにはないですから。韓国には、徴兵制度とか儒学の教えが今でもありますから、緊張感がある。だから、表情にも締まりが出てくるんでしょうね。ドラマは、緊張感の上に成り立っていますから、意識的に緊張感を持つ必要があるわけです。日本の若い役者は、自衛隊で訓練するといいと思います。自衛隊役者部なんてね(笑)。

●役者と監督は、好敵手の関係 30

 もう一つ、今と昔の違いは、監督と役者さんの関係でしょう。昔の役者は監督と意見が食い違うと、すぐ監督のところへ行ってディスカッションしました。演技は監督と役者の戦いですから、監督と役者は敵同士ともいえるんですよ。「どう料理されるか」については、役者としては一番気しなければいけない。
 とくに主役の役者は、自分が考えた全体の流れ、組み立てたプランが監督のそれと違うかどうかをぶつけます。もし、それが違ったら、どう対処しようかと考えなければなりません。
「ホテル」で、支配人役を演じてくれた松方弘樹さんは、そういう素晴らしい役者でしたね。段取りの間など休んでもらってたんですが、いつも見に来てましたね。監督がどんな考えを持ってるのか、いつも気にしていました。一流の役者はやっぱり違いますね。
 三國連太郎さんも、本物の役者さんだと思います。「馬喰一代」では、凄まじい演技でしたよ。しばらく三國さんの姿を見かけなかったので、どうしたんだろうと思ってたら、北海道に行って、馬喰の人たちから話を聞いたりして、役作りをしていたんですよ。三國さんは、あの頃、三七、八才でしたが、役は四〇代。老けた役を演じるために、歯を抜いたんです。そんな役者は、今はなかなかいないですよ。
 フラさんも、いつもはしゃいで陽気な男でしたが、自分の中に役者というものを持っていました。もともと彼は最初進駐軍のジャズのドラマーで、日劇などでも経験を積んでいましたが、そうした経験も大きいでしょう。
 また、森繁久弥さんやエノケンさんといった大先輩をお手本にしているから、いろんなものを吸収できました。こういう師弟関係を通じての文化の継承は、今はなかなかできないんじゃないですか。そういうものがあって、初めて「役」ができて来るんだと思いますが。
 今の日本は、一流の役者が生まれにくいと思います。テレビは時間との戦いですからね。一流の役者を育てるには、時間とお金をかけて、たくさんの経験積ませながら磨いていかないといけないんです。今は、即席の時代。インスタントラーメンのように、手際よく食べられるけど、味わいが残らない(笑)。
 日本映画に、これから良い作品が出てくるためには、まず人づくりでしょうね。役者と監督が、それぞれ経験を積んで、好敵手として互いを磨きあうような関係が生まれていくといいですね。

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